|
|
夢 -NIGHTMARE- 巨大な月が、少女の眼前にかかっていた。その光は冷ややかに、少女を照らしていた。 少女は、月を見上げていたその瞳をゆっくりと己が手に落とした。 少女は目を疑った。 月光に照らし出されたそれは、鋭利に伸びた銀色の爪だった。その爪にまとわりつく真紅の液体・・・・。 「・・・・血?!」 滴る液体の先には、息も絶え絶えになった母の姿があった。 「お母さん!」 胸を朱く染めた母は、苦痛をこらえながら何かを訴えようとしていた。だが、息が零れるだけでなかなか言葉にはならなかった。 月を背にして、少女の顔が闇に沈む。それでも瞳だけは青白く光を放っていた。 母は零れる息を押さえながら、言葉を絞り出した。 「・・・・クレール・・・・自分を・・・・責めないで・・・・。すべては・・・・クレールの・・・・血が・・・・クレールは・・・・悪く・・・・な・・・・・・・・」 言葉がとぎれ、母は動かなくなった。 「私・・・・私が・・・・殺したの・・・・?・・・・お母さんを・・・・」 ただ言葉だけが空気となり、彼女を取り巻く。 「私が殺した・・・・の・・・・?」 張り付けられた情景が永遠に思われた。 しだいに恐怖だけが大きくなり、その場の空間を包み込んでいった。 「私が殺した・・・・・・・・」 その言葉に呼応するように、月は突如として光を閉ざした。暗闇に押しつぶされ、絶望を感じながら少女の意識は遠のいていった。 |
|
|
Copyright ©1998 Nihon Falcom Corp. All Rights Reserved. |
|