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SCENARIO
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■ 天の神々たち ■


「ビヌスさま」
 小さな白い鳩が神々の庭園に飛んできた。
 真っ赤なアネモネの花をくわえ、愛の女神ビヌスの窓辺に止まる。
 美しい女神は、テラスの縁に肘をつき、憂いを含んだまなざしで地上の様子を見ていた。
「ビヌスさま、ビヌスさま」
 小鳩は跳ね踊りながらビヌスの前で赤い花弁をひらひらさせた。
 女神は、ようやく気づいて小さく笑う。
 小鳩の無邪気な贈り物を受け取り、足首まで渦巻いている黄金の髪に挿した。
「きれい、きれい。ビヌスさま、きれい」
 小鳩は飛び回り、幼い言葉で女神を褒め称えた。
 ビヌスは少しだけ喜んだような顔を見せたが、すぐにまた憂いの中に沈んでしまった。
 小鳩は踊りをやめ、心配そうに女神の肩に止まる。
「ビヌスさま、元気ない……」

 女神の憂いの原因は、地上にあった。
 ここ神々の庭園は、とこしえに花の溢れる美しい場所である。
 だが、人間たちが住まう地上世界は違う。様々な災害によって侵され、乱される不安定な世界である。
 ビヌスは、嘆き悲しむ人間たちの姿を見ていた。
 イナゴの大発生から始まり、旱魃、凶作、疫病の蔓延。
 今まさに、地上は災害の見本市のような状況を呈していた。
 それもこれも、神々の父ユイターの理由なき怒りからだった。

 小鳩は無邪気に質問する。
「どうしてこんなに人間たちを苦しめるんですか?」
 女神は首を横に振る。
「わかりません。大神ユイターは、何を怒っていらっしゃるのか」
「ユイターさまに『やめてください』って言ったらどうですか?」
「歎願には行きました。
 けれど、ユイターは天幕を閉ざし、誰とも面会しないのです」
「ユイターさま、どうしちゃったの……?」
「わからないのです。
 なんとかユイターの御心を和らげることができれば……」
 女神は青白い指先で顔を覆った。
 小鳩は、しゅんとして女神の悲しみを見つめた。

「ぼく、人間の国に行って来ます」
 小鳩は、小さく息を吸い込んでから、意を決するように言った。
「人間はあんなにいっぱいいるから、ひとりくらい、ユイターさまのお怒りを解けるものがいるかもしれません。ぼく、見つけてきます」
 白い羽を翻し、小鳩は飛び立った。ビヌスの頭上をひと巡りする。
「だから、元気出してください、ビヌスさま」
 無邪気な宣言と小さな羽毛を残し、小鳩は神々の庭園から飛び去っていった。

 ビヌスは舞い降りてきた羽毛を拾い、つぶやく。
「……もし、ユイターの怒りを解くことができる人間がいるなら。
 その者こそ、真実の英雄と呼ぶにふさわしいでしょう」
画面写真

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