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SCENARIO
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■ 氷の洞窟 ■


 その光が地面の裂け目からほとばしったとき、先生は仰向けに反り返って昏倒した。
 私は急いで駆け寄り、先生の頭を両手で受け止めた。

 王都ペンタウァからそう離れていない洞窟。古代の英知が隠されていると言われる場所。
 私と数人の兄弟弟子たちは、ソクラム先生に従って、古文書を捜しにやってきた。
 目的の書物には、生命を作り出す秘法が記してあるという。
 先生は、いつも少年のように熱っぽい目で語った。
「もし、生命を作り出すことができるなら。致命的な傷を負った人々に、代わりの肉体を与えることができる。家畜を作り出せば、貧しい人々が飢えずに済む」
 私たちは先生の理想に共感し、研究を続けた。
 そして、やっとみつけたのだ。
 ペンタウァ建国より遙か5千年前、この地に先住していた民族が遺した秘法を。
 先生と私たちは喜びにうち震えながら、先住民たちのかけた封印を解いた。
 地面の裂け目に、動物の皮で作った本がある。先生は、両手を伸ばした……

 私は、不思議な光に当たって倒れた先生を抱き起こした。
 先生は、口の端から泡を吹き、小刻みに痙攣している。
 私たちは、全員で力を尽くし、薬草と魔法で先生を助けようとした。
 しかし、痙攣は止まらない。深く皺の刻まれた顔が紫色に変わってゆく。
 仲間のひとりが絶望の叫びをあげたとき、先生の目が大きく開いた。

『キタブ・アル・アジフ……』

 先生の口から、冷たい音が漏れた。いつもの優しい声ではない。機械仕掛けの人形が発するような、抑揚のない言葉だ。
 次の瞬間、私の体は宙を舞った。先生の体が邪悪な赤い光に包まれ、私は雷に打たれたように吹き飛ばされた。
 後頭部と背中を岩に打ち付け、内臓が口から飛び出しそうな衝撃を受ける。
 同時に、何も見えなくなった。

 気がつくと、私は鉄格子の内側にいた。体中が軋んで、動かない。あちこちの骨が折れているようだ。痛みを堪えながら鉄格子に這い寄ると、暗がりの中から先生の姿が現れた。
「生きていたか」
「せ、先生……いったい、何が……?」
「私は、黄泉の国へ行った者たちを呼び戻す。
 しかし、その前に我が物顔でこの地にのさばっている者たちを片づけなくてはならない。ペンタウァとかいう、新興国を叩きつぶさねば」

 高笑いを残して去って行く先生の後ろ姿を見送りながら、私はようやく全てを悟った。
 先生は、先住民族の呪いにかかったのだ。彼らは、黄泉の国から先生を操り、ペンタウァを滅ぼして、再び過去の帝国を作ろうとしている。
 私は逃げだそうとしたが、重傷の体は満足に動かない。
 そのうち、青白い風が足下から吹き上がってきた。
 寒い……

 やがて、洞窟は氷に覆われた。冷たい空気は洞窟から吹きだし、ペンタウァを襲うだろう。
 私の意識は、痛みと寒さでだんだん薄れてゆく。
 誰か……誰か、助けてくれ……
画面写真

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